電源って何のためにあるの?
2025.10.09
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このたびアルファトランスでは、わたしたちが手がけるトランスや電源に関する話題について発信する連載をはじめました。今後、基礎知識的なお話から技術的なノウハウ、業界動向についてまで、さまざまな切り口でお話しする予定なので、ご愛読のほどよろしくお願いします。一回目は電源の基礎知識に関するお話しです。
電子機器を安全かつ正常に動かす
電源というと、みなさんは何を連想しますか? 部屋の壁にあるコンセントを思い出す方が多いのではないでしょうか? 日常生活の中で「電源どこ?」と言うときには、コンセントを指す場合がほとんどですよね。辞書を引くと「電池やコンセントなど、電力を得るもの」とあるので、コンセントも立派な電源です。
しかし、今回お話しする「電源」は同じ名前であっても、コンセントとは違った働きを持つものです。その働きとは「電子機器を安全かつ正常に作動させる」ことで、そのため電源はふたつの重要な役割を担っています。
ひとつは「絶縁」。通常、コンセントから出る電圧は交流100Vと非常に高く、 それがそのまま人体に流れると感電を引き起こすおそれがあります。そこで両者の間にある電源が、電流を絶縁するのです。
もうひとつは「電圧変換」。コンセントの電圧が交流100Vなのに対し、電子機器の多くが直流数Vから直流数10Vの電圧に対応しています。異なる電圧の電流がそのまま流れてきても電子機器は正常に作動しないので、電源が電子機器に適した電圧に変換するわけです。
このように、ざっくりとした説明ですが、コンセントではない電源がどういったもので、何のためにあるのか、だいたいお分かりいただけたでしょうか。
電源なくしてスマホもテレビも使えない
では、その電源はどこにあるのかというと、実はみなさんのすぐそばにあるのです。たとえば、スマホやノートパソコンの充電器。ケーブルの先端や途中にある箱状の部分はACアダプタという名称の電源で、ACアダプタなくしてほとんどのガジェットは使いものにならないと言っても過言ではないでしょう。
一方で、テレビ、エアコン、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機、空気清浄機、ドライヤーなどには電源が内蔵されていて、こういった目に見えない電源が身のまわりの家電製品を安全かつ正常に動かしているのです。あと「こんなものにも!」という例としてはLED電球があり、ちょうど口金あたりに500円硬貨くらいの大きさの電源が組みこまれています。
もちろん家電製品だけでなく、たとえば高速道路の電光掲示板、街路灯、監視カメラなどのインフラや、さらには半導体工場の検査装置、病院の医療機器といった産業分野にも幅広く組み込まれています。私たちが安全に暮らし、社会が円滑に機能するために、電源は「縁の下の力持ち」として日々欠かせない存在なのです。
アポロ計画ゆかりのスイッチング電源
古くから人びとの暮らしを支えてきた電源には、スイッチング電源とリニア電源の二種類があり、現在の主流はスイッチング電源です。その特長は、リニア電源と比べて小型で軽く、しかも電力変換 効率がとてもいい、つまり省エネ性に優れていることです。ここ数年、電源にはさらなる省エネ性が求められています。待機電力という言葉をご存知と思いますが、電子機器のスイッチがオフになっている間も電源は電力を消費しているので、その待機電力をさらに減らすというニーズが年々高まっているのです。
1960年代にスイッチング電源が実用化されるまでは、銅と鉄でつくられたリニア電源しか存在しませんでした。ところがこの電源は大きくて重く、しかも電力変換 効率がおよそ50パーセントと決してよくありません。そこであるプロジェクトに携わる人たちが新しい電源の実用化に取り組んだ成果がスイッチング電源なのですが、そのプロジェクト、何だと思いますか? 実は、アメリカが人類初の月への有人宇宙飛行を実現したアポロ計画なのです。ロケット開発では軽量化が至上命題だったので、おそらく部品の軽量化を突き詰める中で、電源部をいかに軽くするか、という試行錯誤の結果がスイッチング電源だったかと思います。とはいえリニア電源もまだまだ健在で、音に影響をもたらす電磁波などのノイズ発生が少ないことから、今も高級オーディオ製品などに採用されています。
ともあれ、人びとの日常を支える電源のはじまりは人類の歴史を変えた壮大なプロジェクトだったとは、なんだかスゴいですよね。
100通りのオーダーに一つひとつ応える
電源について語りはじめると、あれも言いたい、これも言いたいと話は尽きないのですが、今回はこのくらいにしておきます。
最後に、電源は基本的にオーダーメイドです。発注者が100人いれば100通りのオーダーがあり、それに一つひとつ的確に応えるのが技術者の腕の見せどころです。わたしたちアルファトランスは創業からスイッチング電源の開発に取り組み、電源の設計ができるトランスメーカーとして、多くのお客さまからご満足いただいています。電源についてもっと知りたい、当社に相談したいことがあるという方はぜひ、お気軽にご連絡ください。